「プレリュード(沈める寺)」を観て。

またしても、生まれて初めてのときめきと喜びを感じて帰ってきました
玉三郎さんと花柳壽輔さんの「プレリュード(沈める寺)」を観て。

どんな風にこの感動をお伝えすればいいのか、どんな言葉も不毛に思えて、
その素晴らしさをお伝えする術が見つかりません。表現が見つかりません。
ごめんなさい。最初に謝らせていただきます。でも書きますね(笑)

オーケストラピットから1曲目の「亜麻色の髪の乙女」が流れて
(追記:すみません、1曲目は「野を渡る風」でした。2曲目が「亜麻色の髪の乙女」)
舞台上には床から天井までの丈の紗のスクリーンが何枚も前後に重ねて置かれ
そこに、森の木々の映像が映し出されています。
奥の方の森からは木漏れ日が点滅するようにキラキラ、キラキラ。

最初に旅人であられる壽輔さんが登場。森に迷い込んでしまったのかな、という
朦朧とした印象で、旅の途中に、私自身の心も投影されていくよう。

やがてスクリーンの影に、目の覚めるような水色がふっと浮き上がって
まっすぐに伸びた腕が見えた瞬間、もうハッとするなんて段じゃございませんでした。
その一瞬で、心をすっかりもってかれちゃったんです。ザザザーン。
澄んだ明るい水色が、裾にかけて深い青のグラデーションに変化していく
美しいブルーと煌めくシルバーの飾りの衣裳に身を包んだ水の精の
しなやかに伸びる腕、指先、そして背中。静かに、ゆっくりと移動しながら
揺れている身体はもはや身体ではなくて、流体として存在しているかのよう。
水の流れのようにゆらゆら、空気のようにふわりふわり。
水の精が手を上げて袖がストンと落ちて、真っ白な腕があらわになった時
その透き通るような肌にゾクッと鳥肌がたちました。あ、ひとなんだ。

「亜麻色の髪の乙女」から「雪の上の足跡」、そして「沈める寺」へと曲が変わる
その合間に、無音になるひとときが生まれるのですが、美しい音楽のその間に、
濃密で、静かな二人の対話が感じられて、音のない世界に魂が宿っていました。

スクリーンの森が、気がつくと水底の揺らめきになっていて
さらに深い深い世界へと引きこまれていくのでありました。

玉三郎さんと壽輔さんと千住さんと東京フィルの最強タッグで
ただ一夜のために生まれた、このとてつもない芸術作品は
日本舞踊とオーケストラとか、西洋と東洋とかのジャンルやカテゴリーの違いを
遥かに超えてしまって、宇宙にたった今、新しい星が誕生して輝きを放っている
そんな新鮮さと驚きを、存分に味あわせていただきました。

カーテンコールでは、玉三郎さんは袴で登場されて
そのお姿がカッコいいのなんのって。
玉三郎さんの新しい作品に出逢えた喜びは、一生もの。
またしても玉三郎さんに惚れに惚れて惚れぬいた秋の夜となりました。
一緒に行った友達が「玉三郎さんってのは、凄い人だねぇ」と
帰り道、ずっと唸っていました。

NHKさんが撮影されていましたから
昨日、ご覧になれなかった方も、大丈夫です!

無料で配布してくださったパンフレットが読み応えたっぷり。
一部を抜粋させていただきます。


振付ノート 花柳壽輔

オーケストラと日本舞踊のコラボレーションには、20世紀印象派の音楽が
適切の様に思われます。特にドビュッシーは一番日本人の感性に合っていると
思います。今回坂東玉三郎丈をお誘いして、何を踊るかを決める時も、即座に二人共
ドビュッシーがベストと、意見が一致しました。私の頭の中ではどんどんとイメージが
膨らんで参りました。旅人が森の中をさ迷い歩き、湖のほとりで倒れ伏している所へ、
水の中より一人の女が現れ、旅人を誘惑します。旅人はその魔性の女に魅せられ、
惹かれて後を追い入水すると云う話です。云ってみれば「オンディーヌ」がヒントです。
これに千住博先生の画く幻想的な映像が5枚のスクリーン一杯に映し出され、
変化していくと云う、誠に贅沢な舞台です。私が足の故障により充分に踊ることが
出来ないと思いますので、今回は玉三郎丈のアイデアでコロスを4人出して、動きを
舞台一杯に大きく見せると云う工夫を致しました。この舞踊は玉三郎丈のご出演により
成立したもので、前回以上の成果を挙げられます事を切に願っております。


新作に寄せて 坂東玉三郎

この公演に出させて頂きますことを真に有り難く思っております。今回お家元から
いただいたお役は、水の精ということでございます。お振付も色々とお考え頂き、
私に合うように創って下さったのでございます。この舞踊作品は、物語性を超えた
深い精神の世界のように感じております。それは一生追い求めても手の届かないもの…。
もしそれが芸能だとすれば、芸能に、踊ることに一生を捧げるということかもしれません。
更にまた千住博先生の静謐な、素晴らしい舞台美術の前で踊らせていただきますのも
幸せでございます。東西を融合させた日本舞踊の世界を皆様にお楽しみ頂けますように
一生懸命勤めさせて頂きます。


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ため息しかでません

すばらしい舞台の描写ありがとうございます。

行けなかったのに、桔梗さんの文を読んでいると、森の木々の中の水の流れの音、滑らかにすべる水の中の精が見えてくるようです。

NHK楽しみにしています。でもテレビの画面って小さいんですよね。

伊勢神宮のニュースでアマテラスと聞くたびに、映画館で玉様のアマテラス、ライブビューイングしてくれればよいのに、って思います。昨日の舞台も 、生が無理なら、せめてライブビューイングでも良いから大きな画面で見たかったなー。

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本当に素晴らしかった

桔梗さん こんばんは
桔梗さん よくあの舞台の内容を文章にまとめられたことにビックリです
会場にお越しできなかった方に早くイメージをお伝えしようとされたと思いますが、凄い!です

玉三郎さんの美意識の高さに感服です
舞台全体が1つの動く作品になっていて色彩の調和と水の精の透明感に吸い込まれそうでした
千住博さんの美術と衣装が見事に調和して今でも夢の中で竜宮城かなにかを覗きみたかのような感覚があります
玉三郎さん
ふわぁと浮いたかのようにも見えました
初め玉三郎さんがなんの気配もないままに現れた時から5秒くらいで東京まで来た甲斐があったと思いました
なんだか理由はわからないけど涙が出てきました
幕が降りてからもいつまでも残像が残って
いました。次のボレロも素晴らしかったけど私は気持ちが切り替えれることが出来ませんでした




素晴らしい公演でした

素晴らしい舞台でした。
幕が開いて、針葉樹の森の木々が薄く濃く揺れるスクリーンをみたとき、え? 森? 水の精なのに? と思いましたが、大丈夫、深い森のなかの湖のイメージでした。
進むにつれて、いつのまにか木々の影はうすれて、気が付いたら、辺り一面水色、水底にいたのでした。

舞台全体、色の感じは、緑がかった青、「青緑」で検索してみたら、こういう画像がありました。

http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E9%9D%92%E7%B7%91#mode%3Ddetail%26index%3D55%26st%3D1785

玉三郎さんの衣装も青緑。森と湖の青と緑を凝縮したつやつやのシルクで、ところどころがキラキラひかります。銀色を基調にした帯。

スクリーンの間から、白い横顔をみせて玉三郎さんが音もなく登場するのを見て、公演の成功を確信いたしました。

と書いたところで、としこさんのコメントを拝読。
「初め玉三郎さんがなんの気配もないままに現れた時から5秒くらいで東京まで来た甲斐があったと思いました」
まったくまったくです。

玉三郎さんの「アーム」、堪能しました。「白鳥」の時とはちがって、波を連想させるような、左右が多少ずれる動きが、まあ、美しいこと。
なめらかに床をすべるように歩み、ふわっと膝を折り、すっと立ちあがり、背中をみせての「アーム」の動き、頭のてっぺんからつまさきまで、すばらしくコントロールされていました。

しなやかな海老ぞりも一瞬、ありましたね。極端な反り方ではありませんでしたが、優雅な動きで、後ろに束ねた長い髪を手に取って指をすべらせるところ、魔性満開でした。
そうそう、写真でみた、夕鶴のつうが両手をのばしているところに似た場面もありました。あー、これこれ、写真のイメージに再会できました。

玉三郎さんの表情は終始、無表情、壽輔さんの苦しげな表情と対照的で、全体に「静と動」「聖と俗」との対比が強調されていて、15分の短い間でしたが、充実感はたいへんなものでした。ありがたい舞台でした。

桔梗さんご紹介のパンフレットから、装置担当の千住博先生のところを追加いたします。

千住博 美術ノート

この世のものとは思えない雰囲気を醸し出す坂東玉三郎丈と、その存在に翻弄されつつ生死を超えて行くことになる花柳壽輔先生の格調高い舞台の美術を担当することになった。荘厳な気配の漂う静けさの中でドラマはくりひろげられる。それは遠い未来かもしれないし、この宇宙が生まれる前の最果ての光景かもしれない。淡い光に照らし出された羊水の中の思い出かもしれないし、覚醒しない夢の中の永遠に続く迷宮での出来事かもしれない。 私は壽輔先生の演出の意味するところを考え、お二人の持つ神秘と崇高を更に増幅させて、夢かうつつかと脳裏に残る世界を皆さんにお届けしたいと思い、それこそ夢中でデザイン画を描き重ねた。

無念

 やはり、なにをおいても観に行くべきだったと、桔梗さんのレポートを拝読しめずらしく後悔です。NHK様に感謝。それから
すばらしいレポート、本当にありがとうございました。

もう夢から覚めましたでしょうか?

たのしみですね。

すみれさん

NHKさんが、早く放送してくださるといいですね。
今からとても楽しみです。

私は玉さんをきれいに見たくてブルーレイにして
玉さんを大きく見たくて大画面テレビ買って
玉さんのおかげで映像機器が進化してきました。

すみれさんと共に、いっそプロジェクター買っちゃいますか!
水の精は、やっぱり大画面で観たいですから、この機会に。
なーんてね。ますます仕事しなくなっちゃうもんねー。

〇〇〇さん

やっぱり行きたかったでしょー。
レポートを喜んでいただけて良かったです。
でもほんとにほんとにほんとに素晴らしい舞台のことを
まだまだ伝えきれていなくてはがゆいですe-443

テレビについて、了解です!
放送日の日程がわかったらお知らせしますんで!

ほんとにほんとにほんとーーーに。

とーしーこさーん
(なぜか伸ばして呼びたくなるんです)

思いきって遠征されて、大大大満足の舞台!
ほんとーーーーーに、素晴らしかったです。
私の文章ではとてもお伝えできてなくて恥ずかしいです。
でも書かずにはおれなくて、すみません。

としこさんがおっしゃるように
玉三郎さんの美意識の深遠さ
玉三郎さんに見えている美の世界は崇高で大きくて
それをすぐ目の当りにしたって感じで
ぶっ飛びました。ほんとに感動しました。
演者と衣裳と美術と音楽とが見事に調和して
会場全体がどこか違う世界に浮遊した感覚にもなりました。

>初め玉三郎さんがなんの気配もないままに現れた時から5秒くらいで
 東京まで来た甲斐があったと思いました

私も、玉三郎さんの登場で、やられたー降参!ってなりました。
なんていうんでしょうかね、うまく言葉にできません。
玉三郎さんには、ご自分の姿も舞台の全体像も
しっかり見えているんだなあ、と思うと、それもまた驚きで。
あの世界を創りだせるのは、玉さんじゃなきゃできないですね。

私もボレロの時も、ずっとプレリュードでした(笑)
家に着いても、翌日も、そして今なおプレリュードe-291
当分、この感動に浸ってしまいそうです。

ありがとうございます!

京にんじんさん

細やかに、いろいろフォローしていただいて感謝いたします。

舞台全体が揺れる絵画というか、衣裳と木々の色彩が素晴らしくて
玉三郎さんの帯というのかベルトというのかも美しかったですね。
紺色の地にダイヤのようなキラキラが輝いていて
ああいう衣裳の色合いは歌舞伎では観られませんし
今回の水の精ならではですね。
後ろに反るところも、キレイでしたね。
腕が揺れる波動心地良いんですよね。

壽輔さんの存在も大きくて、
旅人はやっぱり壽輔さんだからこそ
あの世界が出来あがったんだなと思いました。

お二人でいろいろシリーズにして
やっていただきたいですねえ。
あ、千住さんも入れて三人で(勝手なことばかり)
でも、もっともっと、あの世界を拝見したくなりました。

時間を感じない、不思議なひとときでした。

千住さんの美術ノートもありがとうございます!

まだまだ夢の中で

フクギさん

なかなか醒めないというか、
醒めたくなくて浸っているというか。
とにかく強烈な体験でした。
今世紀№1かもしれません。

玉三郎さんのこういった創作の舞台を
これからも見せていただきたいですね。
玉三郎さんの芸術にふれることは
刺激的で新鮮で、とにかく心が大騒ぎです。

力不足ですがレポートを喜んでいただけて
とても嬉しいです。

テレビを見て、またフクギさんの感想も聴かせてくださいね。
プロフィール

桔梗

Author:桔梗
坂東玉三郎さんの 芝居に舞踊に歌唱に舞台演出に 映画監督に朗読に執筆に 歩く姿も潜る姿も後ろ姿も素ッピンも☆☆ すべてに魂を揺さぶられ〜~ 玉さんブラヴォ----ッッッっ!なエブリデイ!

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