玉三郎さんの講義@「演じるということ」

6月7日に明治大学のアカデミーホールで行われた
オープン講座「坂東玉三郎 演じるということ」を受講して参りました。

最初に、玉三郎さんのお話、つぎに斉藤先生と玉三郎さんとの対談、さらに
会場が一体になっての実技!という、脳と心と身体がフル稼働の1時間45分でした。

盛りだくさんで、どれもこれもお伝えしたいことばかりですが、
特に印象的だった部分を3回に分けて書いてみます。
今回は、玉三郎さんのお話を。



「自分を確認する作業」

演じることは、他人になったような気持ちになること。小さい時から
本能的にやってきた。他人になってみて、自分の感情がどこにあるのか、
自分はどう考えているのかなどを客観的に見つめて自分を確認していく
作業なのではないか。役者をしながら自分探しをしているのかもしれない。
お客様は演じている私を見ながら、お客様自身の気持ちと対話しているのではないか。

「コミュニケーションをとること」

演じているドラマを通じて、私もお客様も、自分自身と対話しながら、
コミュニケーションをとっている。そこに生きている実感が得られて
満足してその日を終わる。翌日になると不安になり、また他人になって、
お客様の反応を見て自分はこうだったんだと確認して自分に戻っていく。
不安があるから今まで続けることができた。不安が多すぎても続けられない。

「演じることは、喜怒哀楽の再生」

喜怒哀楽のないところに、台詞をのせたり役をのせたりして喜怒哀楽があるように
するのが俳優の仕事。嬉しくない時に嬉しい芝居をしなくてはならない時、
自分の心の中の嬉しいスイッチを押す。役者なら見ておけというが、いろんな人や
ものを見ておいて、その時の感情をため込んで記憶する。修業して感情のスイッチを
的確にオンオフができるようにし、いろいろな種類を持っている俳優はいい演技ができる。

「感情に似合う、形」

☆演台にあった四角いスポンジを手にとって説明してくださいました。

このスポンジが形だとすると、これより小さい感情だと形しか見えない。これより
はみ出る感情だと感情しか見えない。このスポンジの形と同じような感情がだぶって
いることが肝心。人間は、嘘をついていない限り感情と形がぴったり合っている。
本能でやってるんじゃないかと思わせるほど自然でなければいけない。技術のある
俳優だと思われたら、おしまい。

「感受 浸透 反応」

人間は五感で感受して、理解してから反応する。今の時代は、相手の反応が出てくる
までの時間をじっくり待たずに反応ばかり出てきて、浸透して理解することが省かれている。
浸透の時間はその役によって違ってくる。感受、浸透、反応のタイミングをちゃんと
勉強して、役のテンポに合わせることが俳優の仕事。



玉三郎さんが最初に、「お芝居はするけど講義をするのは大変苦手」と、
おっしゃったのですが、とんでもございません。身近な例を出して具体的かつ論理的かつ
柔らかく、ひとつお話されるごとに、「これは置いておいて、もうひとつ」と
実に明解に、スラスラとご説明してくださいました。興味深いお話の連続で
感受→浸透→反応の嵐でした。

特に、感情のスイッチのお話を聞いた時に、なるほどなぁと納得しました。
玉三郎さんのお芝居やお話にふれるたびに感じる人情の機微、その底深さ、繊細さは、
自分では無意識のうちにもみ消して、なかったことにしようとしている哀しい感情や
恥ずかしい感情、みじめな感情など人間のもろもろの負の感情をも心の中にたくさん
蓄積されて記憶されて表現していらっしゃるからなんですね。
人間や人生の真実を理解するということの奥の深さをつくづく感じました。

また、脚本をよく読んで、作家がどういう人生を送ってきたのかをよく知ることが大事、
というお話もしてくださり、深く感銘を受けました。作家の先生の人生を理解すること
から始まるんですね。そうすることで、その作品に即した、その役のその瞬間を
割り出していってそれをつなげていくと、ひとつの役になる、とおっしゃいました。
凄いですね。もう眼から鱗が落ちまくりで、唸ってばかりでした。

いや~「演じること」って、知れば知るほど難しくて、面白い、
ということがよーくわかりました。 つづく



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No title

玉三郎さんの講義の内容をお話し頂きありがとうございます

四角いスポンジのお話し よく理解できました

有難うございました

深い感銘、感動、そして学び…

余りに深遠で、しかも空の彼方に広がるようなお話ーその瞬間瞬間初めて伺う貴重なお話の数々にへぇぇと感動したり、はぁぁと感銘を受けたり、嗚呼と合点したり…
衒いのない率直でいて真摯な語り口、それでいて自然体で新鮮!
これほど真剣に全身耳で学んだのは顧みればうん十年ぶりです。

余りに豊饒な、時に孤独な玉三郎丈の内面、演技への極めて真剣な取組みよう……
斎藤先生の妙を得た絶妙な進行が、玉三郎丈のこれまで表に出ることのなかった奥義を現したと思いました。
終始にこやかで穏やかな中、次々詳らかになる奥義…

記事にするのは至難の業ーと思いましたが、流石桔梗さん!すばらしい♪
続編 とっても楽しみです!

ついに

7日、歌舞伎座と玉三郎さんの講演会に夜行バスで東京へ行って来ました。
歌舞伎座は一幕見席で片岡仁左衛門出演の寿曽我対面を見ました。
一時間前に並んだら整理番号が9番で、あまりにも嬉しさでやったぁ~って感じでした。
良い席で見たいから前の真ん中で見ました。
本当は中村吉右衛門出演の俊寛を見る予定でしたが
夜行バスに乗ってたから疲れていたのと
一部を見てから二部の幕見席のチケットを買うとなれば混雑して売り切れる可能性があるから。
感想は曽我兄弟は日本史に出てくるからなんとなく分かりました。
役者はまるでひな人形みたいな感覚です。
玉三郎さんの講演会は始まるまで最初は緊張しまくりでした。
始まった途端、何だか知らないけど玉三郎さんを見てはワクワクしてしまったのです。
演じる為に役になりきり表現する話を聞いてなんとなく分かりました!

玉三郎さんではないが

何かの番組で白血病の役をやる為に丸坊主になり
白血病に関する本を読んで苦しそうに演じると聞いたことがあります。

私は元々演劇に興味が無くバラエティー番組やアイドルが出てる番組しか見ないから本当に勉強になりました!

しかも実技をして、セリフを言いながら手を伸ばすとかやりました。演劇は奥深いですね。(^_^;)

ちなみに座った席は本当は前に座りたかったけど
招待席だったからその席よりちょっと後あたりの真ん中に座りました。
間近で玉三郎さんを見れたから超嬉しいかったです!
貴重な体験が出来ました!

形と感情

紫峯さん

コメントありがとうございます。

とても面白いお話ですよね。
形と感情を分けて考えたことはなかったので
役者さんならではの発想で。

あと、こうも言ってらっしゃいました。
おおげさに喜んだりおおげさに泣いたりする時は
相手を喜ばせようとしたり義務感からやっているので
見る人が見ると、それが嘘だなってわかる、と。
言われてみると、日常生活でも、こういうことって
思い当たることがありますね。

第二回目を切望!

ゆの字さん

ほんとうに感銘を受けました。

>衒いのない率直でいて真摯な語り口

伝わってきますよね、玉三郎さんの一言一言が。
役者って、すごいなーーーーっと。
学ぶって、やはり心が、前のめりになれることなんですね。
もっともっと、聴きたい、見たい、吸収したい。
経験をもとにお話しいただくと、凄く説得力があって
その経験がハンパじゃないから、感動します。

斉藤先生もよかったですね。
「ここまで「演じること」を深くやるつもりは、なかったんですが(笑)」と
最後に笑っていらっしゃいましたが、
斉藤先生と玉三郎さんが反応しあって、あのワークショップが
自然発生した感じですね。楽しかったです。

玉三郎さんも何回か、「楽しかった」とおっしゃっていて
それも新鮮でした。

ぜひ第二回目をやっていただけたらいいですよね。


No title

形と感情     感情に似合う形

このスポンジのお話は 歌舞伎役者 玉三郎さんだから

お話しいただけたと  何度 読ませていただいても感銘を受けます

おめでとうございます!

葵どんさん

新歌舞伎座デビューあんど
玉三郎さんの講演会デビュー、
誠におめでとうございます。

幕見席は一時間前で、前の真ん中のお席で
よかったですね。

>始まった途端、何だか知らないけど玉三郎さんを見ては
 ワクワクしてしまったのです。

ワクワクわかります~講演も実技も楽しい時間でしたね。
玉三郎さんはとてもお元気そうで
ハードな5月公演のお疲れなど少しも感じられませんでした。
パワフルな方ですね。

葵どんさんも、夜行バスのハードな弾丸ツアーでしたが
そんなのは、なんのそのですね。

演技のお話は、役者ではない私たちにも
コミュニケーションなど、実践的でためになるお話が
たくさんありましたね。人間を知る作業、深いですね。


そうですね。

紫峯さん

形だけでもダメ、感情だけでもダメ。ですね。
そのバランスの妙は、舞台の玉三郎さんを観ていると
なるほど~こういうことが過不足がないってことなのねー
と、感心することばかりです。

それを言葉で説明していただくと
さらに感動してしまいますね。

自分探し?

レポートどうもありがとうございます。
参加できてよかったですね。おかげで、レポートしていただけて、とてもうれしいです。

興味深い言葉の数々ですが、よくわからないところがあって、考えあぐねていました。

興味深い言葉とは、「スイッチ」と「スポンジ」。

「修業して感情のスイッチを的確にオンオフができるように」

カチっと音が聞こえるようです。

スポンジを手に、「感情と形」の話、具体的でいいですね。感覚的なことを具体的に語るのはお得意の玉三郎さん。で、演台に「スポンジ」? あらかじめ用意されたんでしょうか。ちょっと不思議に思いました。

よくわからないのは、演技することについての前半部分。
「他人になったような気持ちになること」というのはよくわかるのですが、

「お客様は演じている私を見ながら、お客様自身の気持ちと対面しているのではないか」
「演じているドラマを通じて、私もお客様も、自分自身と対面しながら、コミュニケーションをとっている」

どうもよくわかりません。
「お客様」としては、玉三郎さんの舞台をみるときに、「自分自身と対面する」という意識はなくて、「我を忘れる」ために出かけるような気がします。ま、「そこに生きている実感が得られて満足して」いるわけなので、あんまり考えなくてもいいんじゃないかということで、次の舞台を楽しみに待ちたいと思います。

No title

詳しいUPありがとうございます、深くて感激です。続きもよろしくお願いします。
スポンジで…独創的ですね。参りました。

感謝^^

わたしも、玉三郎さんを観ている時、自分とは対面はしていないと思います。
元気でお逢いできることに感謝して、貴重な時間を楽しんでいます。
そういう時間が持てると、人にやさしくなれます。(笑)

玉三郎さんがよくおっしゃいます。
上手いとかきれいと言われているうちはダメなんですと。
玉三郎さんはいい役者です。
そして、やっぱりきれいです。^^




スポンジ

京にんじんさん

おはようございます。

レポートを喜んでいただけてよかったです。
質問をありがとうございます。

スポンジは、たぶんテーブルの上に
置いてあったものじゃないかと思うんですよね。
玉三郎さんがサッと手にとって、このスポンジが、、って
お話をされた時、私の脳内でおこった反応は
「テーブルの上に置いてあった花器の中のスポンジを手にとられたのかな」
なんですけど、良く見えなかったので、あいまいです。
今、考えてみると、なぜ、花器にお花が無かったんだろう、って。記憶違いなのかな。
でも謎のスポンジのおかげで、とてもわかりやすいご説明でした。

それから、
>「お客様は演じている私を見ながら、
  お客様自身の気持ちと対面しているのではないか」

これは私の説明不足だと思います。補足しますと

演じながら自分を確認する作業を、なぜ人の前でやるのか、という
ことからお客様のお話になっていったと思うのですが

自分でないものになって演じている人を観ながら、
お客さんは自分の気持ちとも対話(対面というより対話ですね)したり、
演じている人の普段とその役との差を考えたりしながら
コミュニケーションをとっている、ということだったと思うんです。
「こういう講演会では質問などやりとりできるけど、お芝居は
そういう形でコミュニケーションをとっている」ともおっしゃっていたので
たぶん、演者が、このドラマはこういうものだよ、と
一方的に投げかけて完結しているものではなく、演者とお客さんの間に
無言のうちにコミュニケーションが生まれていて、それは演者との対話であり
また自分との対話でもあり、といったことなのかなと思っています。

あと、その時にこんなお話もされていました。
お洒落をして着飾って自分じゃないような恰好で出かけて
帰ってきた時に洋服を脱いでホッとして、あ、自分って何だったんだろうって
思うことってありますよね、と。それも演じていることかもしれませんね、と。
今はハレとケがはっきりしない時代だから、自分を確認できにくい社会だ、とも。

自分をいろんな状況において(演じて)自分を突き放して見つめてみて、
そこに自分を確認するということなのでしょうかね。


前に玉さんがどちらかでお話していたことなんですけど
「道成寺の花子を観た時に、あああ、わかる、そうそう、恋が叶わない、
という気持ちを、恋そのものではなくともお客様の自分の体験を思いながら
花子の思いに自分を重ねて見ていくことで浄化される」といったような
ことをおっしゃっていましたが、そういうことでもあるんでしょうかね。
私は、この間の千穐楽の時に、そういう気持ちになっていました。
恋そのものではなくて、父との最期を過ごした時の感情がぶわーっと溢れてきて。
理屈では説明がつかないのですが、自分の中にしまっていた感情が
うわっと出てきた感じだったんです、不思議ですね。
それで観終わって、とても清々しい気持ちになったんです。

お客様が我を忘れる時も、演じている人は、そのお客様を見て、
自分を確認しているという意味で、コミュニケーションなんでしょうね。

昨日、ある芝居を観に行ったのですが、
気持ちが今ひとつ伝わってこない役者さんがいて
その人がスポンジに見えてきました。あはは。蛇足でしたー。

待っていてくだせい。

hitomiさん

ありがとうございます。
つづきも、楽しみにしていてくださいね(早くやれよー)

壮大

まるこさん

たぶん意識して対面というか対話するというより
無意識のうちにしているような気がしてきました。
いずれにしても貴重な時間です。

斉藤先生も、「こういう超一流の方が大学にきてくれて
お話をされるのだから、その空間に身を置かないとダメだよ、と。
玉三郎さんに直接会うことで、意識のシャワーをたくさん浴びることが
できるから」とおっしゃっていました。
玉三郎さんの意識のシャワーは、
スケールが大きくて、ナイアガラの滝にうたれているようでした。
プロフィール

桔梗

Author:桔梗
坂東玉三郎さんの 芝居に舞踊に歌唱に舞台演出に 映画監督に朗読に執筆に 歩く姿も潜る姿も後ろ姿も素ッピンも☆☆ すべてに魂を揺さぶられ〜~ 玉さんブラヴォ----ッッッっ!なエブリデイ!

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