鏡花の「創作苦心談」

玉三郎さんが演じる、泉鏡花の世界に棲む女たち。
嬢様、美女、百合や白雪姫、、、
まるで鏡花さんが玉三郎さんの存在を知っていて、
その役柄をあてこんで創作したのかと思うほど、
女たちのイメージが玉三郎さんにオーバーラップする不思議。

私は、玉三郎さんの舞台を通じて、嬢様と宗朝が織りなす
「高野聖」の摩訶不思議なワンダーランドに迷い込み、
妖しくて、楽しくて、清らかなその世界に吸引されて
泉鏡花という作家に、とても興味を抱くようになりました。

そんな鏡花さんの発想に触れる一端となる本に出逢いました。
「泉鏡花とその周辺」。この本の第一章が『「高野聖」成立考』なのです。
鏡花さんは、どんなところからこの話を着想したのか。

その源流として二つの物語、「金驢譚」と「アラビアンナイト」が紹介されています。
鏡花さんは15才位からこれらを愛読し、熱狂、夢中になっていたそう。

「金驢譚」は、紀元二世紀にローマ帝政下のアフリカ州に生まれたアプレイウスが書いた
「黄金の驢馬」の抄訳で、魔法使いの魔術に興味を抱いた主人公リューシャス
という男が、自分も魔法によって「鶴」になろうとするが、
薬を間違えて「驢馬」になり、人間に戻るためには、薔薇の花を食べなければならず、
リューシャスが薔薇の花を求めてさまざまな冒険をする、というお話。

「アラビアンナイト」(鏡花さんの愛読書は井上勤訳『全世界一大寄書』)も、
“女奴隷とその情人を嫉妬により牛に変えて殺した女が復讐されて鹿になったり、
はたまた猿になった僧侶、犬になった姉妹”など、人間を動物に変えてしまう魔法の宝庫。

鏡花さんはリューシャスと同じように魔法に魅せられて、
人間を動物に変えてしまう魔法使いの魔力に非常に興味を抱いていたようです。
多感な少年時代の鏡花さんのキラキラとした感受性が感じられます。

さらにこの本の中では、「高野聖」成立までの動機を、
鏡花さん自身が語る唯一の資料「創作苦心談」を紹介しています。
これが、面白いんです。抜粋します。

「『高野聖』ですか、あれは別にモデルはありませんよ。私の想像で
やったものでさあ、材料は極下らないものです。私の友人で商人をして居る男が
大学生と同行で富山から飛騨の山奥へ這入った話を聞いたのです、飛騨の山中と
云ったら随分ひどいところで、『高野聖』の中に書いてあるやうな、人も通わない
ところです、私の友人が宿についたときに、躰が疲れて汗をかいたものだから
裏の谷川へ出た折に美しい田舎娘と出喰はしたのを聞きまして、想像を加へたのです、

えーあの女ですか、書くのには随分困りましたよ、
何処か気高い所を見せなければ感興をぶちこはしてしまひますからな、
まさか通常の田舎娘とか、世話女房とかにすることが出来ませんので、
ああいう具合にやったのです


又坊さんの方ですネ、あれも
商人とか何とかにすれば全くつまらなくなってしまひます、絵師や詩人なども配合が
よくありません、それでまづ坊さんが幾分か配合がよいだらうと思ったのです。」

「えーあの女ですか」のくだりには頬が緩んじゃいました。
嘘だー、絶対「女」への思い入れはハンパじゃないはずー、と。
苦心談ながら、実に淡々と語る鏡花さんの口調から、きっと人一倍シャイで
すべてを曝けだすことのない、その人柄が垣間見えて楽しいです。

大人になってもキラキラとした感受性を持ち続けて、
ロマンティストで、思いつきが楽しくて、常に新しいことを表現し続ける
そんなところも、鏡花さんと玉三郎さんの共通点なんだな、
という発見がありました。

また少年時代の鏡花さんは、
『用を命じるのもいたいたしい位の、実に綺麗な少年だった』そう。
(玉三郎さんもですよね)

おすすめです!「泉鏡花とその周辺」
(手塚昌行著 武蔵野書房)
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顔立ち・・・

ちょっと玉三郎さんと似ていらっしゃるかしら・・・・^^
前世とか、信じてみたくなるような。(笑)

来月は長唄のお浚い会です。今回は連獅子を弾きます。
まだ不安は大なるも、やっと覚えました。(つもり)
そろそろ着付けの練習を始めようと思いますが、なかなか気持ちが乗らなくて困ります。もちろん、練習は欠かしませんが、なんか弾まなくて。

玉三郎さんにお会いできれば、きっと元気になるんだけど・・・・えへへ。

心なしか

まるこさん

ほそりした輪郭やすっきりとした眼差し
玉さんと同じ系統の美形ですよね。

若いころは、モテモテだったようです。
玉さんは、今もモテモテですね。(言い方古い)

>来月は長唄のお浚い会です。今回は連獅子を弾きます。

わー、すごい。連獅子なんて難しそう。
弾まないなんて言わないで、
アゲアゲで(言い方古い)邁進してください。

6月には、シンガー玉さんに逢えますから。

プロフィール

桔梗

Author:桔梗
坂東玉三郎さんの 芝居に舞踊に歌唱に舞台演出に 映画監督に朗読に執筆に 歩く姿も潜る姿も後ろ姿も素ッピンも☆☆ すべてに魂を揺さぶられ〜~ 玉さんブラヴォ----ッッッっ!なエブリデイ!

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