「坂東玉三郎×十五代 樂吉左衞門」スペシャル対談 ②

京にんじんさん渾身のレポート、
その②を、ご紹介させていただきます。



○「茶碗の中の宇宙」と「見込み」

展覧会タイトルにすごく共感されたという玉三郎さん、茶碗の中に宇宙を感じる
ということに関連して、イスラムのお祈りに使うメダリオンとか、仏像とか、
お祈りの対象について、わりと熱く長く語られました。
「メダリオン」てなに? という疑問を持ちつつ聞いていたところ、ひとは具体的なモノを
手がかりに、その背後にひろがる宇宙に向かって祈っているのではないか、とおっしゃってました。
なお、「メダリオン」とは、ペルシャ絨毯の種類のひとつで、中心部に大きな
模様(メダリオン)をもつタイプだそうです。

さて、「茶碗の中の宇宙」とは、茶碗の底にひきこまれるような力を感じるということで、
当代は「茶碗、とくに長次郎の見込みはすごい」とおっしゃっていて、
玉三郎さんが「展示会でもみんな上から見たくて、ガラスにぶつかっているあとがありました」

当代によれば、「あれはものすごく考えて、実験してると思った」とのこと。
「重要文化財の「無一物」の見込みは奇妙に人工的、真ん中が異様に厚く土が残っていて、
専門家の先生たちのあいだでも、どう考えたらよいか、いまでも答えはできていない。
腰に土を残して、中心のいちばん深い底の部分にむかってぐんと踏み込んでいる。
「大黒(おおぐろ)」「ムキ栗」も、引き込まれるように深いという感じがする」
「利休さんの待庵というお茶室と同じだと思う。利休さんというひとは、向こう側というか、
際限がない、無限とか、永遠ということを考えていたような気がする。
待庵の床の間には角がない。角がないということは、始まりはあるけれども終わりがない、
ずっとつながっているのを実現したのではないかと思った」

注:「見込み」とは、《茶席で茶碗拝見のとき、まず内部をのぞき込むところから》
茶碗の内部の底のあたりのこと。

 当代は、「利休さん」と、さんづけされます。敬意のあらわれなのでしょう。
図録には、茶碗の正面からの写真と底の写真はありますが、「ムキ栗」以外は、
真上からの写真はありません。
ぜひ、「見込み」を写していただきたいです。まあ、わたしには感じ取れないとは思いますが。

○演者の向こう側

 玉三郎さん「芸能の一番望むところは、演じている人の向こう側が見えたらいいかな
ということ。うまかったり美しかったりする必要はあるが、究極的には、それを突き抜けて
しまわなければならないのでは、と思っている」
 
 これ、わたしは、見る側の話かと思っていたら、演じる側の話として続いていきました。
でも、これはこれでよくわかるので、書いておきます。
ものすごく集中した演技とか演奏で、舞台と客席が一体になる瞬間があり、そういう時は、
なんともいえない高揚感を感じます。そういう瞬間のことではないかと思うのですが。

○一子相伝の家に生きるということ

 ところどころで、玉三郎さんは「ご子息」を話題にされて「いままではすれちがうくらい
だったのですが、今回はじめて会話ができました。B型としては、苦しまないで、
親とも戦わないで、とずっと言ってると思います」
当代は「それができたら一番いい。僕は随分たくさん戦いました。みなさんから
「伝統ってすごいですね」といわれると、戦う、「そんなもんわかるわけねえだろ」
 「戦っている中でつくりあげるしかなかった世代です、だからあんな激しい茶碗を作って、
「これで飲めるか」って」
 「すこしづつ変わりつつあります」
 
 確かに、飲めそうなお茶碗になってきたように思いました。

○長次郎の「静かさ」

 当代「長次郎っていうひとつの世界は静かでしょう」とおっしゃいます。
 1997年にヨーロッパにコレクションを持っていったとき、みんな当代のよりも長次郎を
ずっと見ている、パリで、年配の美しい白髪の女性に、どう思うか聞いてみた、
「どう思いますか」、答えは「これはとても静かです」、当代が「西洋にもロマネスクの教会とか、
静かな場所も芸術もあるではないですか」というと、「静けさの質がちがう」
当代、いたく感動して、北斎にびっくりしたゴッホの時代を経て、ようやく西洋が日本を
理解できる場所に立てたと感じた、のだそうです。

○言葉を失うことと、そのまわりを喋っていくことのしあわせということについて

 終わりに近づいて、当代「もうすこし、玉三郎さんにお好きな茶碗をあげていただいて。
長次郎の場合」と、スライドで映していくと、玉三郎さん「ほとんど好き、これもすばらしい」
といいつつ、特定されたのは、「一文字」「万台屋黒(もずやぐろ)」
 玉三郎さんの「言葉が出ない」を受けて、当代「すばらしいものって、言葉が出ない」
 そこで、玉三郎さん、「すばらしいものに出会うと言葉を失い、そのもののまわりを
喋っていくことの幸せを感じます」とおっしゃったのが、すてきな言葉でした。

○「失われた時を求めて」

 玉三郎さん、結びは「最近1年くらい、「失われた時を求めて」という言葉が頭をよぎる。
読んでないけれど。過去のことを思い出しながら、その途中でなにか作品ができるかもしれないと、
そういう心境になっています」
 「失われた時を求めて」はわたしもむろん読んではおらず、マドレーヌを食べたら昔の記憶が
蘇ったというエピソードがあり、それでマドレーヌというお菓子があるのかと知ったわたしですが、
玉三郎さん、むかしの映像の整理などやっておられるはずなので、そこから「なにか作品」が
生まれるかもというのは楽しみ楽しみ、と思った次第です。

京都新聞に掲載の記事がとてもうまくまとまっているので、リンクしておきます。
まだお読みになっていない方、読めるうちにお読みください。
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20170208000163

それから、図録には、玉三郎さんと当代の図録のための対談、中谷美紀さんと当代との対談も
写真付きで収録されています。当代の「自作を語る」もあります。

お茶の世界には全く関心も興味もなく過ごしてきたので、わからない言葉もあり、
10日にもう一度展覧会に行ったのですが、8日よりももっと人が多くて、あまりゆっくり
見られませんでした。東京の展覧会にも、日程が合えば、行きたいと思います。
地元の樂美術館、佐川美術館も行ったことがないので、行きたいと思っています。



京にんじんさん、ありがとうございました。

お二人が仲良しというのが、何となくわかります。
楽さんも、玉三郎さんも、ピュアで繊細で
お話されている中に、お二人の優しさと厳しさが感じられます。
言葉にできないこと、そして目に見えないものを細やかに感じとって、
向こう側を感じさせてくださる作品を創られているのだな、と思いました。

玉三郎さんの見込みのお話、おもしろい。
おでこをガラスにすりすりしてお茶碗を上から見ている図、が浮かびました。
手に触れたくなってしまいますね。どんな感触なんでしょう。
玉三郎さんは、きっと触れていらっしゃいますよね。

楽さんの待庵の床の間には角がない、というお話もいいですね。
角がないということは、始まりはあるけれども終わりがない!
床の間に、宇宙を感じます。
あと高台のないお茶碗を楽さんが創られているということも驚きでした。
楽家は、そういうことは、しちゃいけないのかなと思っていました(笑)。
でも、私も、そういう器に、とても魅力を感じます。たとえ熱くて持てなくても。

「失われた時を求めて」は、私も読んでいません。
やはり紅茶に浸したマドレーヌが浮かびます。
そこは有名だから知っていて、そういう食べ方もあるのか、
なんて、昔、感動した覚えが。でも、そういう食べ方もしたことないですけど。
玉三郎さんは、何を食べて失われた時を思うのでしょう。
マドレーヌではなくて西湖とお抹茶かな。
過去を振り返って作品をイメージされているのですね。
そういうお話も新鮮です。普段は伺えないお話をたっぷり聞かせていただいて、
玉三郎さんロスの毎日に風が吹き抜けました。
京にんじんさんに心より感謝いたします。
どうもありがとうございました。

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ありがとうございました。

おはようございます。
桔梗さん、京にんじんさん、貴重な対談を、ありがとうございました。

パリの年配の女性の言葉に感動いたしました。
「静けさの質が違う」

内の中の宇宙、ということでしょうか。
座禅のようだな、と思いました。

東京でも展覧会があるのですね。
茶碗のことは何も知らないのですが、このレポを拝読してとても興味が湧きました。
私も見込みを、体験したいです。

静けさ

フクギさん

パリの女性の言葉、いいですよね。
静けさの質、イマジネーションを刺激されます。
楽さんは、色めがねでモノを見ない方なんだな、と
対談の記事を拝見して感じました。
あんなにいろんなものを背負っているのに
でも色のついたメガネだったら作品は創れませんね。
玉三郎さんも、透き通ったメガネの持ち主ですね。
そういうところでも共通点が。
血液型はAとBですがね(笑)。

東京の展覧会が待ち遠しいです。
見込みのある茶碗!早く拝みたいです。


プロフィール

桔梗

Author:桔梗
坂東玉三郎さんの 芝居に舞踊に歌唱に舞台演出に 映画監督に朗読に執筆に 歩く姿も潜る姿も後ろ姿も素ッピンも☆☆ すべてに魂を揺さぶられ〜~ 玉さんブラヴォ----ッッッっ!なエブリデイ!

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