読後感想1 「43年前の玉三郎プロジェクト」

5月26日発売の「坂東玉三郎 歌舞伎座立女形への道」を読んで
面白かったことなどツラツラと書いてみようと思います。

一番興味深かったのは、国立劇場の伊藤信夫氏の存在でした。

43年前に「国立劇場のスター」を誕生させるべく、
玉さんの、弱々しく見えても簡単には折れない「弱竹の力」を
いち早く見抜いて、そこに目をつけたところ。これは凄い!

どんなに玉さんの美貌と才能と芯の強さと努力があっても、
やっぱり、それを戦略的にしたたかに、しかも命がけで引っ張り上げてくれる
影のプロデューサーとしての伊藤氏の存在がなければ、
いくら三島由起夫氏に絶賛されても先へは繋がっていなかったのかもしれないな、と思うと、
伊藤さんブラヴォー!力一杯ありがとうー!ですよね。
いかに「人知れず、気がついたらスターになっていた!玉三郎プロジェクト」を
成功させるか、そのプロセスが具体的で面白かったです。

同時に、歌舞伎界もしくは松竹という組織もまた
バリバリ男社会で、ふつうの会社の中でおこっているのと同じような
いやそれ以上のドロドロぐちゃぐちゃの底なし沼があることも痛感。
ただ純粋に芝居を追求できるピュアな世界は、ないですね。
著者は、歌右衛門さんを代表で上げていますが
たぶん、玉さんへの周囲からの妬み、嫉み、僻みは、
ハンパじゃなかったと思うんですよね。
男の妬みほど恐いものはない、と思います。
会社という組織の中で初めて、私自身も、男の足の引っ張り合い
時には女の足も容赦なく引っ張る、惨めで凄まじい争い事を目の当たりにし、
若い頃は、相当ショックを受けていました。
世の中には、こういう男も、いるんだ、と。しかも、けっこう沢山。
10代の玉さんは、そんなウルトラドロドロの渦中を
どんな思いで乗り越えたのでしょうね。
(その辺の取材が一切無いのが、この本の残念なところ。取材しても答えないかな。)

「僕、いじめられてても気づかないんですよね」的なことを今もおっしゃいますが
そこが、玉さんの賢明なところで、その賢明さがあったからこそ
乗り越えていらっしゃれたんですね。

そういう意味でも、玉さんの養父が勘彌さんで本当に良かったと
つくづく思いました。愛情深くて、誠実で、謙虚な勘彌さんがそばにいなければ
やはりこのプロジェクトは、上手くいかなかったんだろうな、と。
どんな時も謙虚さを美徳とする勘彌さんの教えは、
険しい道のりを生き抜いてきた玉さんの指針になっていますよね。

玉さんが万が一、幼い頃に舞台で見た歌右衛門さんの方へ
部屋子で行っていたら~。ぎゃ~(恐ろしくて言葉にならない)

でも、女帝!歌右衛門さんのおかげで、歌舞伎座に出られなかったからこその
効用が意外にたくさんあったのではないかな、とも思いました。
玉さんが、日経でも書いていらっしゃいましたよね。
「国立劇場で(勘彌さんと)二代目尾上松緑さんとよく復活物をよく手掛けていました。
芝居の作り方を間近で見られたことは私の役者人生にとって大きなことでした」と。

女帝のいぬまの洗濯じゃないですけど、いなきゃいないで良かったよね、と。
イヤ~な上司と同じ部署で毎日ストレスをためるより、
どっか違う部署に飛ばされて自由な方がよっぽど気が楽ですもんね。(例が小さい?)

とにかく、勘彌さんや伊藤さんという援軍がいて
あらゆる苦境の中、チャンスをつかんできたのが
玉三郎さんご自身で、この43年間で、自分の生きる道をしっかりと
自らの心と手と足で、切り開いてきたところに拍手喝采です。やっぱり奇跡です。

ところで、著者は、かなり歌右衛門さんに敵意むきだしですが
その辺の実態は、リアルタイムで歌右衛門さんを拝見していないこともあり、
今ひとつわかりませんでした。実際はどうだったんでしょうか。

本の帯(美しすぎた「若女形」と老いた「女帝」の氷の闘い。)が
あまりにもキャッチーで、「氷の闘い!」に最初、意識を引っ張られながら読み始めましたが
実際は、著者が「この本は、玉三郎の約40年をトレースすることを主たる目的とする~」
と冒頭で綴っているように、後半は、特に膨大な資料の引用オンパレードですね。
玉三郎さんや関係者への取材が一切、なかったのはやっぱり残念かな。

あと、引用資料で「女性セブン」「平凡」「週刊明星」「週刊新潮」
「週刊文春」「週刊サンケイ」などなど、わりと俗っぽい雑誌がたくさん出てきて、
その辺の雑誌に歌舞伎関連の情報が日常的に掲載されたのだなというのも驚きでした。
今では、海老蔵さんや獅童さんの女性ネタくらいですもんね。
歌舞伎界が、もっと身近だった気がします。

著者はご自身の著作をいろいろなページで宣伝されていますが
一番読みたくなった資料は、やはり

 伊藤信夫さんが書いた
「影法師の詠ーある芝居制作者の手記」でした。

内容は、
玉三郎千代紙草紙/異邦人/朝の虹/忠臣蔵の呪い/「夜明け前」終に夜明けず
[要旨]
興味深い歌舞伎の世界の真実!

またまた要旨のコピーがちょいと気になりますが
読んでみようかなあ。

とまあ、きりがなくて、まだまだ、
いろいろ発見や感想がありますので
また書こうと思いますが、
皆様の読後感想もぜひ、こちらでお喋りしてくださいね。



プロフィール

桔梗

Author:桔梗
坂東玉三郎さんの 芝居に舞踊に歌唱に舞台演出に 映画監督に朗読に執筆に 歩く姿も潜る姿も後ろ姿も素ッピンも☆☆ すべてに魂を揺さぶられ〜~ 玉さんブラヴォ----ッッッっ!なエブリデイ!

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